思考の種

覚書として

接触性皮膚炎せっしょくせいひふえん〔皮膚科・内科〕

接触性皮膚炎
せっしょくせいひふえん
〔皮膚科・内科〕
 
原因/症状
 
 化学物質などの異物が皮膚に接触して、かゆみ、丘のように盛り上がった発疹、痛みをともなう湿疹や水腫れ、ときには膿が出るほどの湿疹ができる皮膚病です。
 
 
化学物質だけではなく、動物や植物から出てくる物質が皮膚に触れても発症します。いわゆるかぶれです。
 アレルギー性接触皮膚炎では、ある物質が皮膚に接触することによって、皮膚でアレルギー反応が起きて発症します。はじめに、ある物質が皮膚に接すると、体の中のリンパ球が、抗原であるその物質との間に抗体をつくります。この抗体が全身に広がるようになります。こうして体は抗体にして免疫をもちます。その後、同じ物質が皮膚に触れると、その接触した場所にアレルギー反応による皮膚炎が現れるようになります。
 アレルギー性接触皮膚炎は、どんなものでも起こるといわれています。コバルト、ニッケル、金などの金属、漆、毛染めに含まれるパラフェニレンジアミン、抗生物質、香料など。
 歯の治療で金属を歯にかぶせたためにその金属に対するアレルギーが出てくることは珍しいことではありません。
 また、アレルギー体質でない人でもかかる刺激性接触皮膚炎があります。ペンキや接着剤などの激しい刺激が肌に付着して生じる発疹などがこれにあたります。さらには脱毛クリーム、パーマ液などでも起こります。
 その症状と部位によって、ある程度原因物質を推定することが可能です。原因物質が植物ならば、前腕、顔面などに小さな水ぶくれがまじったむくみをともなう赤い発疹が出ます。イヤリングなどの材料、メガネのつるなどで耳に湿疹がでます。女性の顔面に湿疹が出ていれば、化粧品や石けんを疑います。
 首、手の甲、顔面など光があたるところだけにかぶれが出てきたら、皮膚についた物質に光があたってから症状が出る光毒性接触性皮膚炎か、光があたるだけでアレルギー反応を起こす光アレルギー性接触皮膚炎だと考えられます。
 
診断/治療/生活上の注意点
 
 接触性皮膚炎を引き起こす原因物質をつきとめる方法にパッチテスト(皮膚貼付試験)があります。皮膚炎の原因として疑われる物質を小さく切って背中に貼って様子をみるテストです。貼ってから24~48時間後にはがして、湿疹などの皮膚炎が出ていないかどうかを判定します。湿疹が出ていれば、その物質による接触性皮膚炎と診断ができます。
 皮膚炎の症状を抑えるためによく使われるのが副腎皮質ホルモン薬です。全身に症状が出ているときは、短期間の副腎皮質ホルモン剤の内服と、抗アレルギー薬の投与を行います。皮膚炎がじくじくして、広い範囲になるときは、細菌が感染することもありますので、塗り薬として抗生物質を使うこともあります。非副腎皮質ホルモン薬の塗り薬は、新しい皮膚炎の原因物質になる可能性があるのでほとんど使われません。
 接触性皮膚炎は原因となる物質と接触しなければ症状は現れません。しかしながら、その物質に対する体のアレルギー反応は消えたわけではありません。体は一度覚えた物質をなかなか忘れないようにできているからです。症状がなくなった後、わずかな量の原因物質と接触しても皮膚炎が出てくることがあります。ですから、接触性皮膚炎を治療するためには、生活習慣を見直す必要が出てきます。金属製イヤリングによる耳のかぶれがどうしてもとれないときは、非金属のアクセサリーに替える必要があるかもしれません。
 硬貨に使われているニッケル、コバルト、お椀やお盆によく使われる漆など、日本人の生活に密着した物質も接触性皮膚炎の原因になることがあります。接触性皮膚炎から100%逃れることはできないと考えられます。したがって、症状のある人は、早めに原因物質を特定して、日頃の生活を見直しておくとよいでしょう。