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覚書として

アレルギー性鼻炎あれるぎーせいびえん〔内科・耳鼻咽喉科〕

アレルギー性鼻炎
あれるぎーせいびえん
〔内科・耳鼻咽喉科〕
 
原因
 
 アレルギーの原因となる物質をアレルゲンまたは抗原といい、アレルゲンと体内で反応する抗体は免疫グロブリンE(IgE)と呼ばれています。鼻粘膜で、この抗原と抗体が反応を起こし、その結果、ヒスタミン、ロイコトリエンなどの化学物質が神経や血管に働いて、鼻のかゆみ、くしゃみや鼻水、鼻づまりという3つの症状が出てきます。典型的なアレルギー疾患のひとつです。
 アレルギー性鼻炎は、アレルゲンの種類により、季節によって現れる症状と、季節に関係なく症状が出るものとの2つのタイプがあります。花粉症は季節によって発症する季節性アレルギー性鼻炎の代表格ですが、この花粉アレルギーのアレルゲンは、日本で約50種類もあるとされています。
 2月から5月はスギ科、ヒノキ科、カバノキ科、ブナ科などの樹木の花粉がアレルゲンとなります。3月から10月はイネ科の植物の花粉が空気中に飛散し、鼻炎を引き起こします。
 季節に関係のない通年性アレルギー性鼻炎のアレルゲンは、家の中のチリ、ホコリ、カビ、ダニなどです。室内で猫、犬などのペットを飼っていると、その動物から出る毛、ふけなどもアレルゲンになります。
 また、食物もアレルゲンになる大きな要素です。たとえば、牛乳、卵、大豆、などは食物の3大アレルゲンといわれているほどです。
 さらに、生活環境も大きな関わりをもっています。自動車の排気ガスなどの大気汚染もアレルギー性鼻炎を悪化させる要因のひとつですし、マンション、団地などのコンクリート壁からもアレルゲンとなる化学物質が検出されています。
 また、アレルゲンが特定できず、アレルギー性鼻炎と同じ症状を示すものを血管運動性鼻炎といいます。鼻の自律神経失調症によって鼻の粘膜が過敏になることで発症し、ストレスや自律神経失調症などもその症状に大きな影響を与えることがわかっています。
 
症状/検査・診断
 
 アレルギー性鼻炎は、くしゃみ、水状の鼻水、鼻づまりの3大症状が現れます。ほかには、鼻の粘膜がかゆくなったり、目が痛くなったり、涙がでたり、のどの違和感、頭痛なども起こります。かゆみは、鼻だけではなく、口、のど、耳などにも起こることがあります。また、倦怠感、疲れやすいという症状を訴える人もいます。
 合併症として、同じアレルゲンによる気管支ぜんそく、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎などがあります。室内のチリ、ホコリなどのハウスダストと真菌は、ぜんそくのアレルゲンにもなることがわかっています。
 アレルギー性鼻炎の診断のためには、まず患者本人のアレルギー症、その住環境を確かめることがもっとも重要になります。家族歴、職業、ペットの有無、薬物などについて詳しく調べることで、アレルギー性鼻炎とアレルゲンの関係が推定しやすくなります。
 鼻の粘膜を鼻鏡検査でみると、鼻の粘膜が青白くむくんでおり、鼻水がたくさんでていることが確認できます。鼻汁検査で鼻汁の中の好酸球という細胞を調べると高い値を示します。また、血液中の免疫グロブリンEの値も高くなっています。
 アレルゲンが何であるかを調べるために、皮膚テストが行われます。アレルゲンとして疑わしい物質を水に溶かし、これを腕の皮下に注射します。約15分後にその皮膚の状態が赤く腫れた度合いを調べて、アレルゲンを特定します。鼻の中に、アレルゲンと疑われる物質を塗り付けてアレルギー反応がでるかどうかをみる鼻粘膜誘発反応も診断のために有効です。
 アレルギー性鼻炎と間違えやすい病気としては、血管運動性鼻炎があります。これはアレルゲンが不明で、天候、匂いなどで発症します。かぜもはじめはアレルギー性鼻炎と似た症状になります。レセルピンなどの薬物が鼻炎症状を引き起こすことも知られています。
 
治療
 
 アレルギー性鼻炎を抑えるには、アレルゲンを避けることがいちばん効果的です。室内のダニ、ホコリなどは完全になくすことはできませんが、徹底的に掃除をすればかなり症状が軽くなります。花粉症による鼻炎では、屋外での活動を避けるか、花粉粒子が鼻に入らないようにフィルター付きのマスクをつけることなどで症状の悪化を防ぐことが可能になります。また、最近は大変なペットブームですが、体毛がアレルゲンになるような犬、猫、鳥類などのペットは飼わないほうが無難です。
 薬物療法として、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、ステロイド薬があります。くしゃみ、鼻のかゆみにはヒスタミンが関係しているので抗ヒスタミン薬が効果的です。抗アレルギー薬は、効果がでるのが遅いので気長に服用するようにします。花粉が飛ぶ2週間ほど前に予防的に投与することもあります。
 ステロイド薬は、微量の投与ですぐに効果が現れますが、鼻血がでやすくなるなどの副作用があります。ほかに、点鼻薬として使われるものに抗コリン薬があります。α交感神経刺激薬である血管収縮薬には、鼻づまりの原因のうっ血、浮腫、などの改善が期待できますが、何度も繰り返し使うと効果が薄くなり、血管収縮薬の使用後に血管が広がって鼻づまりが一層ひどくなってしまうことがあります。
 アレルギー治療は現在、様々な療法が試みられていますが、一般に広く行われているのが特異的減感作療法です。これは、低い濃度のアレルゲンを体内に注射して、徐々に体内に遮断抗体という物質をつくりだし、アレルギー反応を抑えようという治療法です。体が投与されたアレルゲンに鈍感になっていくことを期待した治療法ですが、どのようなメカニズムで症状が抑えられるのかまだはっきりわかっていません。経験的な治療法のひとつです。なお、鼻の粘膜が固くなった頑固な鼻詰まりには、レーザーによる治療法もあります。