思考の種

覚書として

【読書メモ】自らをマネジメントする ドラッカー流 「フィードバック」手帳

【読書メモ】自らをマネジメントする ドラッカー流 「フィードバック」手帳

井坂康志 かんき出版 (2016-05-08) ISBN:9784761271695

【総評】

フィードバックの効能と手帳(ノート)を使ったフィードバックのノウハウの紹介といった内容。

ドラッカーがフィードバックを重要視していた事は紛れもない事実だが、本書のノウハウが「ドラッカー流」かと言われると疑問が残る。

個人的にはフィードバックやレビューというものは長年続けていく中でカイゼンを加えながら自分の型を作り上げるものだと考えているのだが、今現在フィードバックを行っていない方や、フィードバックと言われても何をすればいいのかわからないといった方にとっては本書が良い入口になると思う。

自分自身をマネジメントする

マネジメントは、ビジネスだけでなく、あなたの人生にとっても役立つ。

以上のように述べられているように、本書ではビジネスというよりはプライベートも含めた人生全般において自分自身をマネジメントしていくことを目的としている。

では、自分自身をマネジメントするとはどういうことなのか?

自分自身をマネジメントする仕組みこそが「フィードバック」です。言い換えれば、「言葉」を「行動」へと変換し、さらには、自分の意図した「成長」へと導く「もう一つの脳」なのです。

本書ではこのように述べられている。

私の解釈としては、フィードバックは日々の実績(活動記録)を言葉に置き換え脳の外(紙面)にアウトプットし、それを俯瞰で観察し、今後の望ましい未来のためのアクション(タスク)に変換し、実行する。そしてその実績を再度言葉に置き換え検証する。というサイクルを繰り返す仕組みなのだと考えている。

フィードバックのプロセス

ドラッカーは人の強みの活用を強く唱えていた。 そして、その強みを発見するためにフィードバックを行っていたという。 本書におけるフィードバックの具体的な手法としては以下の通りである。

①今の「自分との対話」をする。

②それをふまえて「目標設定」をする。

③それをもとに「行動」する。

④そのうえで「目標と成果の照合」をする。

これをひたすら繰り返す。

これにより自分の「強み」を見極め、その「強み」をもとに自分を築き上げていく。

このうち①②④を一冊の手帳(ノート)を使って管理していくのである。

「フィードバック」の仕組みがくるくると回りだすと、まるで呼吸をするかのように、ほぼ無意識のうちに優れた仕組みを利用できます。

しかも、「フィードバック」の効果をある程度実感できるようになると、「フィードバック」をすること自体が心地よくなってきます。

何かのためにがんばるのではなく、「フィードバック」をすることが心に安らぎをもたらすのです。

この一節に関しては大いに共感できる。

脳内のデトックス効果といった感じであり、毎日風呂に入ってリラックスするのとも似たような感覚である。

心の安らぎという点に関しては書き出すという行為の影響が強いのであろう。

思考を書き出すことの効能

いらいらしたり、不安になったりしているときのことを思い起こしてください。

意味もなく、焦っているはずです。

無意識下で感情が暴れている状態ともいえます。

こうした状態では思考が浅くなり、優先順位を的確に判断できません。

そんなときにこそ、「書き出す」ようにすべきです。

書くことは、無意識の自分との対話だからです。

禅の師や合気道の先生などは、呼吸法の達人でもあります。

ていねいな深呼吸が心身をすっきりさせるように、書き出すことで頭を整理し、心を安定させるのです。

この手帳を日頃から肌身離さず持ち歩くことは、意識の安全地帯、いわば心の非武装中立地帯が、常に手のひらにあることになります。

思考を書き出すということの効能に関しては様々なところで言われているが、睡眠前にその日の思考を紙面に吐き出すという意味では毎晩のフィードバックとの相性の良さを感じる。

強みの見極め

大切なのは、「強み」というものは、ぼんやりとした抽象的なものではないということ。

「成果」という具体的なもののなかに、その姿を現すものなのです。

「強み」は、成果を通してその姿を現す。

だからこそ、目標設定を行い、その目標と成果の照合を何度も繰り返していくことが「強み」の見極めになるのです。

「強み」を活かせとは世間でもよく言われる事であるが、その強みの見極めについて言及したものは意外に少なかったように思う。

フィードバック手帳では、過去の成果から「強み」を見極める具体的な手法が示されていたのが良い。

「強みでないもの」を切り捨てる

「強みでないもの」の廃棄見極めの結果、自分の「強みでないもの」とわかったものを廃棄する。

これにより無駄な時間やストレスの要因を取り除き、「強み」にフォーカスできるようにする。

「強みでないもの」を見極めて切り捨てることは「強み」を見つけること同じくらい大事だと考える。

「強みでないもの」で圧迫された状態では新しく「強み」がはいる余地もない。

それゆえにまずは「強みでないもの」の廃棄に努めるべきと思う。

本書においてもドラッカーのエピソードとして以下のような記述がある。

ドラッカーは、コンサルティング先の社長にしばしば、こう質問しています。

「最近、何かやめたことはありますか」

ドラッカーらしい質問です。

人は、何かをはじめることばかりに意識を取られてしまい、何かをやめることはなかなか意識できないものです。

時間は有限です。

何かをはじめるには、何かをやめなければなりません。

まさにその通りだと思う。

また向上心の強い人ほど「何かを始める」ことと「何かをやめる」ことのバランスが崩れてしまうことが多いように感じる。

意識して「やめる」習慣をもつとよいであろう。

切り捨てるものの基準としては本書では以下のように述べられていた。

成果が挙がらないもの、心理的抵抗感のあるものを、遠慮なく廃棄してください。

いまゼロからはじめるかと自らに問うたとき、その答えが「NO」であれば廃棄の対象とする。

一年間やってみて成果が挙がらなかったことはあきらめてください。そして二度と試さないでください。

過去の惰性で続けていることはないであろうか?

今やっていることは、ゼロからでもまたはじめられる気持ちは持っているか?

よく自身に問うてみる必要があると感じた。

自分をどう使うか?

「自分を使って、どのような成果を挙げるべきか」を考え抜くことです。

「自分がどんな成果を挙げたいのか」と考えると、必ず間違えます。

というよりも、答えが出なくなり、やがて袋小路に迷い込みます。

あくまでも、「自分という素材」を世のためにどう役立てられるかが肝心なのです。

経験を重ねるほどに、このことの意味がよくわかってくるはずです。

この一文にはドキッとした。

組織でのマネジメントにおいては、部下の強みを最大限使って成果を上げることに注力していたと思うが、自分自身に関しては「どんな成果を挙げたいか」に意識が向いてしまっていた。

このことに関しては時間をとってゆっくり考えた方が良さそうだ。